Image: Kieran Lawton | Creative Commons
Underwater bait-setter on fishing boat.
海鳥を守るために鈎針を深く設置
漁獲量を増やすための漁業者の努力が、新たな海鳥安全措置の始まりにつながることもあります。

マグロの代わりに海鳥を誘き寄せてしまう

ある日、漁業者デイブ・ケリアン(Dave Kellian)は手釣りでキハダマグロを捕えようとしていました。マグロを誘き寄せるため、海にマイワシを投げ入れましたが、マグロのいる水深まで沈む前にお腹を空かした海鳥が獲ってしまいました。

「船の周りにいたアカアシミズナギドリをすべて引き付けてしまったけど、マグロはさっぱりだった!」とデイブ。

そこで、デイブと他の乗組員はレインコートの腕とウエスト部分を括って「袋」を作り、その中にまず錘となる岩を入れ、マイワシを重ね入れました。これをロープの端に付け、船の側面から水中に降ろしました。海鳥が届かない深さに到達したところでロープをぐいと引くと、その勢いでレインコートのマジックテープが開き、中に入っていたマイワシが海中に流れ出ました。

海面から10メートル以上の水深でマイワシを放流すると、海鳥は水中に潜って餌を獲ろうとしないことを彼らは発見しました。マイワシをこの深さで放流すれば、マグロを誘き寄せる本来の目的を果たし、デイブと乗組員は再び漁業を行うことができました。

漁業者と発明者

この「実験」を通じて、デイブは餌の付いた鈎針を隠した状態で水中に沈め、10メートルの水深で放流することで海鳥が捕えられる可能性が低くなると気づきました。そこで、デイブはそのような装置の開発に乗り出したのです。

オーストラリア人の科学者グレイアム・ロバートソンをはじめ、多くの人の献身と努力により、水中投餌機は試験を完了し、効果が証明され、運用体制に入りました。コンピュータで駆動するこの油圧式装置は、餌の付いた鈎針を海鳥の視覚に入らない、また海鳥の届かないところに放つことができます。

水中投餌機はSkadia Technologiesが市販しています。